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ソフトウェア開発技術者の人材育成

ソフトウェア開発技術者の人材育成 その2


古賀詳二
An approach to education for system engineers
Shoji Koga
キーワード:35歳定年説,心の教育,米百俵,資格,ITスキル標準

5. 人事と資格

私はプロという言葉の中に言い訳のできない結果責任を感じる。プロ野球選手、プロゴルファー、プロ棋士などは成績(能力)に応じた賞金が与えられる。それ以外にも名声に応じて副収入もある。会社員では考えられないことである。
年功序列の賃金体系は社会の高度成長によって実現できた。しかし、社会の成長が停滞し、企業の業績が安定すると年齢に応じた賃金の上昇は経営の大きなリスクとなった。そのリスクを回避するために、成果主義賃金体系などを導入する企業が増えている。しかし、客観的に成果を評価できるのか課題が残る。基準を明確にしないと成果主義が社内に不協和音の不満を生み、業績が却って悪化する原因になる。年齢に応じた賃金は結婚・子育てなどの社会安定を実現するためには必要であるが、プロ意識の低下に繋がっている。
私は能力に応じた給与を誰もが納得できる方法がないかと考えた。我々の業界には国家・民間の情報処理資格が多い。資格の偏差値に応じて昇給や昇格の条件に資格に使うことで解決できないかと考えた。
表1に示すように情報処理資格は一夜漬けの勉強では取れない資格であることを理解していただけると思う。資格の合格率と合格者の平均年齢を見ると、年齢に応じた知識と実務経験がないと合格できないこともわかる。
高度情報処理資格に合格することは容易ではない。合格は自信になり、仕事に取り組む姿勢が変わっていく。また、部下からは尊敬され、上司としての威厳を持てる。これが資格取得の効果である。私は資格に対して、高額な資格給を設定し、やる気を起こさせている。また、資格が昇格の条件としている。例えば、主任はソフトウェア開発技術者、課長は高度情報処理技術者、部長は2個以上の高度情報処理技術者を取得していることを必要条件としている。さらに事業部長以上の役職者は学会会員又は業界でのボランティア活動をすることを必要条件と定めている。

表1 情報処理試験統計情報[4]
 資格名応募者数(人)応募者の平均年齢受験者数(人)受験者の平均年齢合格者数(人)合格者の平均年齢合格率
平成18年度春期基本情報技術者93,64325.762,61324.99,20224.414.70%
ソフトウェア開発技術者54,43629.630,31229.14,2642614.10%
テクニカルエンジニア(エンベデッドシステム) 4,913 34.7 3,121 34.7 406 33.1 13.00%
テクニカルエンジニア(情報セキュリティ) 29,403 34.8 18,128 34.7 1,227 32.3 6.80%
テクニカルエンジニア(データベース) 17,905 32.6 10,253 32.3 1,038 29.8 10.10%
テクニカルエンジニア(システム管理) 6,997 37.2 3,658 37.2 294 35.5 8.00%
システム監査技術者 7,015 40.3 3,822 40.6 369 38.9 9.70%
平成18年度秋期 基本情報技術者 100,636 25.2 71,054 24.6 17,163 24 24.20%
ソフトウェア開発技術者 48,166 29.2 28,757 28.7 5,051 26.7 17.60%
上級システムアドミニストレータ 3,550 37.4 2,076 38.1 235 37.8 11.30%
テクニカルエンジニア(ネットワーク) 26,143 33 16,108 32.9 1,793 31.4 11.10%
情報セキュリティアドミニストレータ 34,146 35.4 22,563 35.5 3,337 33.8 14.80%
アプリケーションエンジニア 10,945 33.8 6,505 33.4 632 31.9 9.70%
プロジェクトマネージャ 13,462 39 7,654 39 759 36.9 9.90%
システムアナリスト 4,649 39.4 2,958 39.5 318 38.1 10.80%


6. ITスキル標準とキャリアアップ

 システムの規模やプロジェクトの規模によって、必要とする人材の構成が変わってくる。特に大規模なシステムになるとチームワークやコミュニケーションが重要になる。しかし、この業界のシステムエンジニアやプログラマは大人しい性格の人材が多いと言われてきた。大人しい性格の人材や平均的な技術力の集合体ではプロジェクトがうまく進んでいかない。
 従来からプログラマ→システムエンジニア→プロジェクトマネージャ→コンサルタントが一般的なキャリアアップであった。しかし、ユーザシステム開発の多様化や複雑さが加速する中で従来の発想では長期的に人材育成できない状況になっている。
このような背景の中で、高度なIT人材育成を目的に経済産業省の独立行政法人 情報処理推進機構は各種IT関連サービスの提供に必要とされる能力を明確化・体系化した指標であるITスキル標準を策定し、産学におけるITサービス・プロフェッショナルの教育・訓練等に有用な「ものさし」(共通枠組)を提供している。
ITスキル標準では11職種、38専門分野に分類し、それぞれの専門分野について7段階のレベルを設定、レベルごとに求められるスキル、知識、経験が定義されているので5年、10年、20年先の自分をイメージできる人生を設計できるようになる。当社もこのITスキル標準を導入し、人材のスキルを客観的に把握して、各人材の長所を伸ばし、欠点を強化することでキャリアアップを明確にしている。
2004年からITスキル標準を導入して、2006年3月にその結果を計測した。1年前のスキルより社員の平均スキルが0.7ポイント向上し、前年対比の売上高と経常利益がそれぞれ58%、600%と増収・増益した結果をもたらした。高度な技術者の育成が業績向上に直結した結果となった。

7.まとめ

 以上のように心の教育、資格取得、ヒューマンスキル強化などの取組みで創業から6年で高度な技術を保有する人材を多数育てることができた。また、その人材を活用して、新潟県長岡市にある会社と異業種連合のコンソーシアムを設立し夢を抱かせる事業を行っている。また研究開発型NPOに参加して、新しい分野の研究・開発も行っている。今後もITスキル標準などを活用しながら高度な技術を保有する人材の育成と「仁」を実践できる人間を育てることで国家・社会に貢献できる企業に成長したい。


●ソフトウェア開発技術者の人材育成 01
<社団法人日本経営工学会 経営システム vol.16 No.5より/20061201>

●ボスからの招待状<B-ingより/20070101>
●目指すは少数精鋭のSE集団。<産経新聞より/20010923>

     
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